本研究は、東アジアのタイポグラフィが単に西洋の影響を受けてきた周縁的な流れではなく、独自の言語構造と視覚的感性に基づき、世界のタイポグラフィ文化に新たな方向性を示しているという認識から出発しました。
2001年から2023年まで開催された国際タイポグラフィ・ビエンナーレ「タイポジャンチ(Typojanchi)」に参加した東アジアのデザイナーたちの作品と活動を中心に、視覚言語の変化と時代ごとの流れを時系列的に整理したデジタルアーカイブです。
しかし、タイポジャンチ参加作家の作品は東アジア・タイポグラフィの重要な一側面を示していますが、その全体的な構造を理解するためには、教育制度、印刷技術、社会政策、政治的構造、展示文化など、多層的な文脈を併せて考察する必要があります。このような認識のもと、今後はこの範囲を拡張し、言語・政策・文化的文脈の中で、タイポグラフィを「言語・権力・技術・文化」が交差する構造として理解していくことを目指します。
また、本デジタル年表は継続的に拡張・更新される研究型プラットフォームです。今後はタイポジャンチ以外の主要な展覧会、学術機関、政策の変化、新しいデジタルメディア環境なども追加し、東アジア・タイポグラフィの同時代的な動向を立体的に可視化するビジュアル・データベースとして発展していく予定です。